求道者/影山影司
 
時折勢いを弱めては新たに炭を投げ入れられて火箸で掻き乱される火にあった。

 一通りの夕食を食べ終え、川の水に晒して洗った食器を拭き終わる頃、丁度、炭火は一等美しく輝いた。煌煌と火焔を吐き出すのでは無い。むしろ、その身に火を凝縮したように静かに燃えるのだ。黒々とした皮膚の下に橙の熱を隠し持っている様も美しいが、火箸で突き刺して炭の一つを割ると、熟しきった果実のように赤い。瑞々しさを感じる程に鮮やかなその色に、私は没頭する。

 私は炭火に憧れていた。
 生の木材や、人工燃料などより、よっぽど美しく燃える炭火に。

 もっとも私自身がそのような美しさを手に入れる事は無く、現在、私の肉体
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