求道者/影山影司
肉体は老化を迎えつつある。かつて張りの合った皮膚は緩みが生じ、無駄の無いシルエットは重力に負けて歪んでいる。私は別段、モデルや俳優といった人様に見られる商売を営んでいた訳では無い。だが、絵描きであった。私は美を求めることを生業にしていたのである。
肉体の劣化が精神の劣化を生み、精神の劣化が作品の劣化を生むのだ、というと決まって人は笑った。晩年活躍した画家だって、晩成の人だって幾らだっているじゃないか。そのようなことを言うのは、まるで見当違いだ、と。私はそれに対して何か言うつもりは無い。彼らは彼らであって、私は私なのだ。老いてエネルギイを増す人間もいれば、老いてエネルギイを喪う人間もいる。私は後
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