生きていることのめぐりを感じる詩集 続 安藤元雄詩集/イダヅカマコト
 
でも「彼女のコートもカドミウム・グリーンだ
/運河の黒い水には良く似合うだろう」のように言葉の中にかくれていたり、「誰がこの街へ死にに来るのか」と直接的に書かれたりしています。

例えば、『野鼠』。

草むらで出くわしたネズミを覚えていることについて、えんえんと考える詩の中で、語り手は過去、ネズミほどに小さかった頃へ帰ります。

{引用=でもとにかく私たちは一瞬見つめあい
それから目をそらし合った
草むらが揺れもしなかったのに
彼の姿はもうなかった
私の覚えているのはそれだけだが
また出逢ったとして彼とわかるだろうか
彼のほうでも私の見分けがつくだろうか
もっともあいつ
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