生きていることのめぐりを感じる詩集 続 安藤元雄詩集/イダヅカマコト
 
いつにはおれの及びもつかない嗅覚というものがあるからな
それであるいは思い出してくれるかもしれないさ
見当をつけたり なつかしんだり
足音も聞かないうちから嫌って道をよけたり
それもまあ おぼえているうちには入るだろう
そして何かこう 声には出さないまでも
奇妙な感情が頭の中にひとふしの
旋律のように浮かんで流れることだってあるかも知れない
たとえばおれが
七草なずな
唐土の鳥が
日本の国に
渡らぬ先に
七草たたく
すととん とんよ
という唄を時折わけもなく思い浮かべるように
これは昔祖母が歌って聞かせてくれた唄
私には何のことやら分からない唄だったが
考えてみ
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