宵の挨拶/北街かな
 
色づいて七色に染まりだし、いくつかの事象がその位置をそっと変えてゆくのを感じました。
 三日月はご機嫌そうに、てかてかと輪郭をちらつかせました、すると三日月はすこし大きくなったのです。どういうことだろうかと考える必要もなく、ああ、三日月がこっちに近づいてきたなと理解しました。
 すると三日月はなんと、また歌いだしました。
 アアーラーソォーノォーアアアァー・クゥ・マァーアア、ダレー。
 鼓膜がはじけ飛んで脳みそにひっかかるかとおもいました。三日月が私のごく近くで、おおごえを張りあげて歌ですらない轟音を吐き出したから当然です。轟音は窓とベッドとお布団と、ふかふかのくまさんを彼方までふっ飛ばし
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