宵の挨拶/北街かな
かね?
定例の宇宙生誕記念日における祭りの予行かね?
などとと口々にうわさをはじめます。眠っていた昼の動物たちも不機嫌そうに目をしばたかせながら、ねぐらから片手をにょっきりだしてみせるのです。
あれよあれよと、沈黙していたはずの深い深い闇の時間が、あわただしく波立ってきたので、私はあわててしまいました。北の時計塔のてっぺんにある鐘楼の釣鐘のつやめきに目をそらしたり、その直後には西にある広葉樹の生え揃ったお山の中腹にあるぽっかりあいた禿げの広場に黒目を泳がしてみたり、誰もきづかない私のからだの足元にある重く、よどんだ、くろい悪魔の染み込んだ人間型の陰影に目を落としたり、やっぱり何もな
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