宵の挨拶/北街かな
 
しない、
 あきらめろ、
 私にそんなチカラなんて無い、
 脆弱だ、惰弱だ、矮小だ、
 白痴だ、無能だ、短足だ、愚鈍だ、ぶきっちょだ、おっちょこちょいだ、無理だ、無理に決まっている私なんて、
 と大騒ぎして私を引きとめようとします。しかし私は、無理と決まっていようが決まってなかろうが月がどんどんと地上へ落ちている事実は変わらない、と思いましたので、なんとか無視しました。そして月の落下予測点へと猛烈の勢いで走ったのです。
 走っても走っても目指す点は近くなりません、よほど遠くなのでしょう。それでもとにかく走ってみました。月のまぶしさは視界をまっしろく覆い何も見えなくなってゆきます。もう、
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