宵の挨拶/北街かな
 
う、もうだめか。

 目を閉じました。
 まっくらになりました。
 そっと目を開けますと、まだ地面に足がついているのがわかります。
 月は、あの巨大な光はどこへ行った。




 三日月の鋭いナイフは、
 私のかかと後ろにべっとりとのびた黒いあくまの、どまんなかを突き刺して、
 静かに、地上に刺さっていました。
 さみしく夜風が吹いています
 ついにくしゃみがでました
 ばらばらの夜空が東のあたりでほんのり桃色に色づいています

 あくまはフリュギュニュンジュミョン…ルルルゥと汚い声で歌って事切れました
 三日月はゆっくりと地平に沈み込んでゆきます
 あかるくなるころには砂になって風にさらわれてゆきました



 朝です




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