宵の挨拶/北街かな
りぐにゃりとタテヨコに歪み、ヒューヒューホーと小さく歌っては何事もないように澄まし、ひとりでぴかひか光っているのです。そのさまがあんまり悲しくておかしいから私はつい、泣きながらも、くすりと笑ってみたのです。
すると三日月は、この歌がそんなにも面白いかい、と誤解してしまったようで、ヒューイヒョーイホホーイとよりいっそう大げさに演技をし、おどけながら歌って踊って跳ねて見せるのです。私はどうにも申し訳なく、心が置けなくなって、おどおどして目をそらしていました。
すると遠くの森の隙間からフクロウとコウモリたちがばたばたと顔をあらわしてきて、
なんしたの?
今夜はお祝いでもあるのかね
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