朝帰り/百瀬朝子
うか
父が怒った
母が泣いた
あたしは旅の支度をしている
*
上空で風が吹く
よそよそしい朝の光が再び
気だるい仲間を照らしだす
始発の汽車にゆられてる
夜を明かして帰還する人々と
朝を迎えて出陣する人々が
ぎゅうぎゅうの箱の中で混ざり合う
いずれの人々も
眠気を帯びた同じような顔つきで
ゆられてる
汽車の速度で解散の時が近づく
次の駅に停まればあたしたち
この汽車を降りて
自分たちの足で
レールのない道を
歩き出さなくてはならない
道は分かれた
二度と会うことはないだろう
そんな寂しいことを
認めたくないあたしは
さ
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