時/高杉芹香
 


いや。

あたしが、きみにしてあげられることがもうあまり思い浮かばなかった。

きみは逞しくなっていたし、疲れてもいた。

きみは律して生きていたし、堕ちてもいた。

あたしは今そばにいても何もしてあげることがないような気持ちになった。

春がまた訪れてまたきみは誰かに出会うんだと思う。

あたしはきみを慈しんで来たけれど

あたしなんかよりもっともっときみを慈しむ人に出会うべきだとも思った。

それできみが今よりもっともっと笑えるならそれでいいと思った。

きみが幸せであって欲しいと心から思った。



きみに会えなくなる日々を増やして。

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