落日のインフレーション/北街かな
押しては ひいて
全てが明白なようでいて
とことんぜんぶが謎だった
居並ぶ蓄光ターミナル電灯電池電柱のさきっぽに
いつもの伝書鳩がとまった
羽根から蛍光黄緑の液がこぼれ
とびあがったのち地面ぎりぎりにおっこち
ばさりと暴れ
風圧に転がり込み
消失しかけたら
到達点へと、
残光を背にして 羽ばたき去ったよ
今度は顕微鏡を覗くことにした友人は
始原菌のカノジョが出来たと微笑んだ
最初の生命はきっとぼくだけのものサと満足げだった
あれよとゆきさる鳩が夕闇を巡回し
路地裏の意志薄弱を記録している
くちばしでぬるい風を切り
回路構成を無限にover-write
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