OUTSIDER/渡 ひろこ
て漏れ出してしまうのだ
零れる滴りは、パラノイアが見る夢よりも鮮烈かもしれない
アンバランスなオブジェであることを隠し
居場所を求めて若い水草が群生する湖に思い切って飛び込んでみたが
戯れにしなやかな水草が足首に絡んできても
光合成を繰り返す湖水は吐き出す泡で空気の層を作り
ぴったり肌には浸透してくれない
青い隔絶の膜を纏ってしまったわたしは
皮膚の内側が寒々しくて
貼りついた寂しさを溶かそうと
黄昏を抱くハ長調の海で泳いでも
異形の漂流者はやんわりと横波を受け
いつの間にか波打ち際まで戻ってしまう
同じ熟成度だと思っていたのに、成分が違ったらしい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(17)