OUTSIDER/渡 ひろこ
 


どちらの領域の水にも抵抗なく浸ったつもりでも
馴染まないミュータント
そつなく流線型に水を掻きたいのに
制御できないノイズを発生させる病んだクライシス



わたしは増殖する結晶を抱えながら
どこにも属さない異形のオブジェとして、独りで立っている
その尖端を細くやわらかく伸ばし闇を突きぬけ
ティツィアーノの絵筆のごとく
わたしの中のミューズを描くしか存在価値がないのだ



試しに鋭利なナイフを腰に当て削ぎ落としても
すぐにジンジャーエールのような液体が滲んで
切り取った断面をジワリ と濡らしていった





戻る   Point(17)