カンナ/結城 森士
 
               生らの楽しそうな話し声が聞こえてきて、その度に羨ましい気
                 持ちになったり、悔しい気持ちになったり、今日はどんな出来事
                 が彼らの間で起こり、繰り返されていくのだろうと考え、ぐるぐる
                 と回る想像に気をとられてしまうこともあった………
 気持ちが酷く落ち込んいるときは、夕暮れの空を眺めた。極まれに太陽が水を落としたように潤んでいる時があり、それを見ると、カンナの花が夕陽の中に溶け込んでいくような錯覚を覚え、不思議と心が休まった。

 書きかけの小説は、その日も捗
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