カンナ/結城 森士
一言告げてから降りようとした
(すみません、降ろしてください
すると運転手は少年の声で言った
(月曜日、が過ぎ去って久しいですね
*
ふと
目を開けて
手を伸ばし
明かりを点けて
カーテンも開けると
何もかも嘘のように思えた
夜空には静かに月が浮いていた
大きく息を吐き出して寝返りを打つ
さっきよりは落ち着いたのかもしれない
「月曜日が過ぎ去って久しいですね」
呪文のような意味の無い言葉を
何度も口の中で反芻していると
数人がカーテンの隙間を潜って
部屋に入ってきたのが分かった
「月曜日、が過ぎ去って久しいですね」「ところで」「明かりは消さ
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