カンナ/結城 森士
から
(どうしたの(なにがあったの
(話せないことなんてあるの(教えてよ
(心配してるよ(ねえ
(何を書いているんだ(見せてくれないか
(ねえ(何を書いているんだ(見せてくれないか
(きみの言葉を聞きたいんだ
(心配しなくてもいいよ(ぼくは
*
何時からか、何処かで、何かが点灯していた
信号機の赤のような淡い円形の光が
交差点の向こう側で青に切り替わる
それを合図に、実体の無い影達が
一斉に午後の街を徘徊しはじめる
ゆっくりと徐行してきたタクシーを何気なく拾うと
運転手は行く先も聞かずに発車させた
ぼんやりと嫌な予感がしたので
一
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)