カンナ/結城 森士
 
から
(どうしたの(なにがあったの
(話せないことなんてあるの(教えてよ
(心配してるよ(ねえ
(何を書いているんだ(見せてくれないか
(ねえ(何を書いているんだ(見せてくれないか
(きみの言葉を聞きたいんだ

(心配しなくてもいいよ(ぼくは



 何時からか、何処かで、何かが点灯していた
 信号機の赤のような淡い円形の光が
 交差点の向こう側で青に切り替わる
 それを合図に、実体の無い影達が
 一斉に午後の街を徘徊しはじめる

 ゆっくりと徐行してきたタクシーを何気なく拾うと
 運転手は行く先も聞かずに発車させた
 ぼんやりと嫌な予感がしたので
 一
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