売々/土田
りとって、わたしはなすがまま、どこまで続くのかわからない街の石畳を見つめることしかできませんでした
あなたさまのお心など、わたくしはわからなかったものですから、どうして良いのかわからず一言、お許しくださいませと、そしてわたくしからあなたさまに触れることは、いけないことだと思っていましたが、そのときどうしてかあなたさまのその歪んだ唇を、あたしのあかぎれのあなたさまにむしりとられた手でそっと噤んでしまい、あなたさまはそれを罪だと、わたくしとあなたさまのふたりの罪だとおおせられ、わたくしはなにを思ったのかあなたさまのほっそりとしたきれいな手をむしりとって、砕けた夜の欠けらがちりばめられたさわさわと
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