このままどこかに行ってしまってもいい気がした夜/ANA
てしまい
あわてて電話を切った
そしてその瞬間後悔する
どうしょうもない感情が押し寄せてきて
とっくのとうに葬った君の面影が
滲んでいく視界に浮かび上がる
今、君に会いに行ったら、どうなるだろう?
このままどこかに行ってもいい気がした夜
受話器を机に置いて
私は吸えないタバコに火をつけた
私にはやさしい恋人がいて
決して怒られることはなくて
毎日朝食を作ってもらっていて
もしかしたらこの人にするかもしれない、と思うこともあって
幸福に溢れているのよ
光でいっぱいの毎日を送っているのよ
私には未来があるのよ
とっくのとうに、歩いていってしまったのよ
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