生姜湯/Affettuoso [アフェットゥオーソ]
 

 例年通り雨がどこかで雪にかわって
 俺はやっぱり黙ってて
 すべては音もなくつもって






  *


 二十年飲んできて初めて生姜湯を作った
 手がかじかんで
 おろし金で指を切って
 ちいさな背中をとりとめもなく思い出して
 どうしようもなく
 痛くて
 むちゃくちゃに砂糖を入れて
 苦いのも辛いのも もうたくさんだから
 水あめよりも
 甘い生姜湯を供えた


  *

 
  (泥にまみれた生姜
   流し台ではねる凍てた水しぶき
   血がふきだしそうに紅い掌
   台所の窓はいつも北風が雪と吹き込んで
   ちい
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