熱と遺産の日/水町綜助
 
     まるい曲線も描いているようだ
      花に空気がぬけていけば


 歩道を走り抜けることはたのしい
 夏の緑は不思議だ
 強烈な日差しを掻き散らして
 胸のなかをやくから
 吐き気がこみ上げるくらい
 気持ちを掻き回して
 それだけだ
 それでどうなるわけでもなくて
 俺はどうしようもなくなって
 だれかのじょうずな絶叫をひびかせる
 胸郭いっぱいに
 くうきを吸い
 だれにもみられない場所で
 安心する
 転げ落ちそうなところを
 抱き止められたみたいに


     *


 雨がひどい
 大粒を路上にたたきつけ
 黒く染まっ
[次のページ]
戻る   Point(8)