焼却炉/カンチェルスキス
 
 男の攻撃から
 仲間をかばうためだ
 男は甲高い声で叫んでいた
 赤いナイロンのフード付の上着
 束ねても良さそうな長髪に
 短パンから
 華奢で細い足が伸びていた
 カマキリみたいだった
 停めていた
 自転車のかごから
 先端が金属の施錠チェーンをつかんで
 浮浪者の頭をめがけて
 振り下ろした
 倒れた浮浪者からも
 かばう仲間からも
 何も声は聞こえなかった
 まわりの者たちの男を制止する
 非力な声だけ
 光と影に
 恐ろしいほど
 くっきり区別された
 アスファルトの頭上に
 雲散していった



 もうこれ以上
 何をされても
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