焼却炉/カンチェルスキス
 

 浮浪者は動かないままだった
 誰かが通報し
 救急車が駆けつけても
 もう助からないことは
 誰もわかっていた
 男の攻撃は
 あと百回蹴り上げても
 おさまりそうになかった



 すぐ近くの動物園では
 ピンクで終わりゆく
 何羽かのフラミンゴが
 気まぐれに
 片足で立っていた
 五時になれば
 時計台から
 白雪姫が出てきて
 楽隊と
 踊りとともに
 歌をうたう



 一人の中年女がやがて
 ついたてみたいに立ちふさがって
 男のふるまいを
 止めた
 蹴り上げる男の足が
 空振りした
 男はずっと裸足で
 浮浪者
[次のページ]
戻る   Point(4)