還元水の楽譜 #4・5/《81》柴田望
 
んの畑に降りそそぐはずの陽光を遮断する桑葉の大枝を切るためにトランク開けたまま鋸と脚立乗せて走った近所の大人たち野菜作る小学校の敷地お義父さんの畑は一番奥なので防風の桑や桜が天まで生い広がりトマトの伸びを遅らす二つ折りの脚立開いた梯子幹に立て掛けてお義父さんは高いところまで颯爽と登り削り屑さらさら落とすある程度切れば折れるかに見えたが樹皮は硬くしぶといようやくガサガサ落ちる大天狗の団扇からトマト護るため地面で待ち構えていたぼくはしだいに空へ吸い込まれ突如尻餅ついて枝豆踏んだ義父さんも梯子よろめかせたびたび落ちそうになったやがて桑のほうが根負けしたかくしてトマトと枝豆は暗黒面の支配からほとんど開放さ
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