還元水の楽譜 #4・5/《81》柴田望
 
放され午後2時の角度と出会うぼくらが吸い込まれた空は断ち切る行為そのものの切断により開栓された光の供給分だけ雨も直接ふりそそぐであろう生い茂る桑の葉の枝に死をもたらした痕跡により生長を促す碑を遺す良い作物の実りには良い光と良い影、良い土と良い空気、良い水と程よい乾燥が必要だ条件を理想に近づける理想掲げた時点ですでに作業ははじまっておりどこかで切らないかぎり闇を排き出し下界の生命へ運命をもたらすもちろん影だって必要だ全部を見たからと言って視覚できない事情までは知るよしもないと知るのが捜査の鍵だ



初出『砂の女』08年7月発行 《81》柴田望
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