多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
 
的風景、ひとりの女性が自分の車にガソリンを入れている、そのとき、突然、何かが起きる。あるいは起きたのか。島の山手のどこかから巨大な何かが立ち上がり、その山の方角から白とも灰とも青ともつかぬ不気味な色の何かがじんわりと空一杯に広がってゆく。あたり一面が白く輝き、地面にこぼれていたガソリンが燃え始める。画面はストップモーション、ガソリンを入れていた女性の独白が聞こえる……「あれは、はじめての経験でした、何が起きているかわからなかったにしろ、なんだかとてつもないこと、とりかえしのつかないこと、恐ろしいことが起きているのだと思いました。いまこれから私は死ぬのだ、と自覚して、自覚したとたんに時が止まったよう
[次のページ]
戻る   Point(2)