多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
ようでした。まるで映画のストップモーションみたいに。」
【シーン6】
シーン1と同じ舞台。学会の会場のようなところ。会場は満員。夜。カメラはまず会場を俯瞰し、それから屋根に近い高く大きな窓へ。その窓を外側から割って、ヒスパニック系の男性が入ってくる。自分にはやるべきことがあるのだと決意した人間に見られるような毅然とした表情で、空中をゆっくり滑りながら会場中央の空中で停止する。さしのべた手の元に、銀色の縦の円盤があらわれる。男性はそれを触らずに操る。カメラは次に反対側の窓へ。今度は一人の女性が窓を割って入ってくる。白髪に灰色の目だが、顔は若い。今こそそのときなのだと確信した人間にしか見られな
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