多重化してゆく夢の記録/佐々宝砂
かなびっくり歩いてくる。銀色の円盤が、男性の手に渡される。彼は、その円盤を操ることができない。別なカメラが会場を写す。女性が白い液体を満たした大きな瓶を抱えている。歩いて会場に入ろうとしてきたごくふつうの女性だ。そこに会場の中から走りかけてきた男が体当たりする。瓶が割れて、白い液体がこぼれちる。画面はホワイトアウト。
【シーン2】
舞台は「この次元の日本」ではない日本。時代は昭和初期? ロシアでは革命が起きず、日本とロシアは軍事的に協力して、アジアを支配しようとしている。そんな世界である。手持ちカメラの目線。十代半ばと見える少女が一人、アパートの共同水場で、毒薬を飲もうとする。そこに母親が
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