残り香/蜜柑
を立てて
壊れ始めていた
最初は涙が止まらなくなった
心に溜めていた一生分の涙を
何日、何ヶ月かけて流し終えた
すると心はカラカラに乾いて
感情を表すことがひどく難しくなった
笑うことすらままならないので
今では仕方がないので、仮面を被ることにしている
次に食べ物が喉を通らなくなった
ついには何も食べれなくなったので
私は空気を食べる事にした
空気はお日様や草や風の味がした
たまに空気に混じって、色んな人が吐き出した
裏切りや、怒りや、悲しみが紛れ込むので
喉を通らず、しばしば水で流し込むこともあった
そんな日は決まって胸がキリキリと締め
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