残り香/蜜柑
 
締め付けられた

最後には眠れなくなった

瞳を閉じると瞼の裏に住んでいる
君の面影が優しく話しかけてくるのが
いつしか怖くなった

何を映すでもない虚ろな瞳は
いつも困っているようで宙をさ迷っていた

いっそ誰かにあげてしまおうか


そんな時、君から連絡が来た

変わり果てた私を見て君は
『ご飯は食べているのか?睡眠は取っているのか?
君が倒れてしまったら、もう僕と連絡が取れなくなるんだよ?
それでもいいの?・・・僕は嫌だよ・・・』
と言った

私と君の間には何が残っているのだろう

君が捨てたのは、消したのは、私なのに
私の匂いなのに

何故そんなにも悲しい顔をするの?

カラカラに乾いた心がカランと音を立てて静かに泣いた


家に帰ると、煙草と香水が混ざった
君の匂いがした
私の髪や体、服に染み付いたようだ

君との間に何かが出来た気がした

今日は君の匂いに優しく包まれて、ゆっくりと
眠る事が出来るのかもしれない











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