お菊と清十郎/星月冬灯
 



 ああ

 清十郎さまは

 私を選んでくれた

 生身の人間の女よりも

 顔色一つ変えられない

 このお菊のことを


 私は知っていた

 清十郎さまが

 私を選んでくれることを

 
 私を見つめる目

 その仕草

 その気遣い

 まるで恋人のように

 慈しみ深く接してくれる

 清十郎さま


 私をそっと抱き上げ

 小さな小舟に二人だけ

 波に揺られながら

 どこか知らない場所まで

 ずっと一緒


 ぽたりぽたりと

 私の白い顔に

 清十郎さまの

 赤
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