お菊と清十郎/星月冬灯
 
 心も体も私のもの

 あんな女には渡したくない

 精悍で気の優しい清十郎さま

 本当の貴方をわかっているのは

 この私だけ

 きっとあの女に

 誑かされたに違いない


 ああ

 この身が人間になれたなら


 この醜い心の声が

 聞こえたのか

 ある日

 気の狂った女が

 私を罵り刃物で

 切り刻もうとした


 とっさに私を庇った清十郎さま

 おかわいそうに

 人形師として大切な腕を

 傷付けてしまった

 私への愛故に

 簡単に女を裏切り

 殺めてくれた優しいお人

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