お菊と清十郎/星月冬灯
 


 この身を呪い

 夜な夜な

 髪を乱しながら

 泣き暮れる


 芝居の中でも

 私は男に捨てられた

 「お菊」を演じて

 今こうして

 恋する男に

 この想いさえも

 気付いてもらえない

 悲しい女を演じている


 けれど

 どんなに清十郎さまが

 他の女を好いていようとも

 この私は


 このお菊だけは

 決して手放さない

 嬉しいけれど切ない

 我が胸の内

 ただ清十郎さまだけが

 知らない


 人間になりたい

 この身が変われば

 心
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