お米をこぼした日/千月 話子
 
と音を立てたら 私 
の背中から 金色の穂が生えて
窓の隙間を通る風に 2人して揺れていた
狭い台所の無法地帯
何があっても 誰にも気付けない


まだ明るい夕方の空を見上げながら
手に持ったぎしりと詰まる米カップ
思い出すのは あの時の切なさ

  
  「お米をこぼした日」

暑い日の西方から
早馬のように暗雲がやって来て
ゴロゴロと小言を言いながら
ほんの少しも雨を滴らせずに
いきなり ドッカ!と怒りをぶちまけた
忌々しい雷の轟音が
私の頭の天辺からゾゾゾと伝わって
全身を痙攣させて ぶれる指先
持ち上げたカップが滑り落ちたら
さようなら 美しか
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