いつか海へでる船/水町綜助
 
衝撃から
立ち上がり
あるいた

誰かは腕を折ったろう
足を引きずり
胸から落ちたものは
いまでも呼吸が苦しくて
この目に映るものすべて
あまさと

あまさと
美しさが
混じる場所で生まれる
悲しさと
ぶつかって生まれる
いつまでも聞き馴染まない絶叫とに
誘われ
あるきだした
身にまとう風は
キリキリと痛くそして
あるところで
それぞれを知った

  *

いちど動き出しては
とめる術(すべ)はないよ
幸いなるかな

  *

たとえば海原のうえ
どこかへ出航したばかりの旅客船
甲板の上で
それぞれ
まためぐり会えばいい
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