いつか海へでる船/水町綜助
衝撃から
立ち上がり
あるいた
誰かは腕を折ったろう
足を引きずり
胸から落ちたものは
いまでも呼吸が苦しくて
この目に映るものすべて
あまさと
あまさと
美しさが
混じる場所で生まれる
悲しさと
ぶつかって生まれる
いつまでも聞き馴染まない絶叫とに
誘われ
あるきだした
身にまとう風は
キリキリと痛くそして
あるところで
それぞれを知った
*
いちど動き出しては
とめる術(すべ)はないよ
幸いなるかな
*
たとえば海原のうえ
どこかへ出航したばかりの旅客船
甲板の上で
それぞれ
まためぐり会えばいい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(29)