いつか海へでる船/水町綜助
 
いい

どこかで失ったとしても
鉱物のように研ぎ澄まされた姿で
まだぶつかり続けてきたんだ
そうぶつかり続けてきたんだそれで
僕は舳先の横で手すりに凭れて
遠くの島をみている
君は甲板のテーブルの傍らで長い髪を逆巻きながら
しゃぼん玉を吹いて
君は海と空の間
鳥の飛ぶ位置をみつめている
あいつは船首の一番先に立って
海原の照り返しに
煌めきに発音を刻み
あのこはそのかたわらで
帽子を押さえてる
強い
強い風だ
そして影を緑色の甲板に
深く刻むのは
強すぎる太陽じゃなく
それぞれのからだ
この人のかたちをした
僕だ

この船がどこへ行くかなんて知ったことじゃない








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