夜の空になる/結城 森士
 

水を撒いていたら
ふいに、沙織ちゃんの頬に
きらりと、光るものが走った
傾きかけた太陽の光に照らされて
あたしは思わず息を呑んだ
その瞬間から
彼女はあたしにとって
世界で一番美しい少女になった

けれど、
二人で埋めたヒマワリが咲く前に
あたしは悪い大人に悪戯をされ
その日から一歩も外へ
出られなくなってしまった
沙織ちゃんは
一度もお見舞いに来てくれなかった
あたしは
沙織ちゃんが来てくれるのを
ずっと待っていたのに



忘れかけていた土地の
忘れかけていた学校の
下校のチャイムの音が
街中に響いた
授業を終えて家に帰る生徒達の声で

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