かつていちどは人間だったもの/影山影司
蹴した。
「人間ね、一度楽しいこと憶えちゃうと堪らんね。最近ついついやり過ぎちゃうよ。Sっ気多いからぁ」
パパの愛情が足らなかったんですね、と返すと、あー、うん。とはぐらかされた。少し意外だったが、まともな人間がこんなところでこんな事をしている訳が無かった。
それから六日経った。深夜。
「前言ってたね、ネアンデルタール人の話。アレ、やっぱり無理だったと思うよ」
眼鏡が突然、俺の寮部屋にやって来た。
靴も脱がないまま、玄関で困ったように頭をがりがりと掻いた後、「一度でも味を占めちまえば、後はそれを楽しむしかなくなるもん。オナニーしたら、絶望するだろ? あれが無かったら人間は猿
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