かつていちどは人間だったもの/影山影司
 
 断片的に送られる実験結果、眼鏡との曖昧な世間話、そして俺が実際に見た光景を寄り合わせて話すからだ。

 鬼の持つ瘤は、バッタ等の昆虫に見られる神経瘤と似たものである。例えば人間はその情報処理を脳味噌のみに任せているから、指先の情報は長い神経を伝って脳味噌をくぐり、それから動かねばならない。だが、例えば脇や腰などに情報処理機能があれば、情報を短時間で伝達、処理できるため素早い動作が可能である。バッタなどは脳ほどではないが、簡単な情報処理機能を神経を毛糸玉みたいにしたもので代用している。
 鬼と昆虫の違いは、昆虫のそれはあくまで神経が絡まったものであるのに対し、鬼の瘤は堅い外皮の中に液状の神経
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