かつていちどは人間だったもの/影山影司
いた手で肩を叩かれる。よどんだ眼が覗き込んでくる。嫌な臭いがする。倉庫の中からはいたぶられた鬼の押し殺した声が。
冗談じゃない。
俺は下っ端だったから、研究に関する重要な情報は知らない。仕事と言えばぞくぞくと運ばれてくる鬼の管理、上から渡された実験結果の整理が主だった。
「うーん、非道だ」
数字と記号ばかりの書類を見て、率直な感想が漏れるのは優秀だからかもしれない。研究員としては優秀だった眼鏡は、管理人としてはもちろん最悪だった。実験スケジュールを調整して鬼を暫くちょろまかす事に関して、奴はこれまた優秀な情報操作を行った。
ここから先の事は正確じゃない情報を含む。
断
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