サラマンダー/しろう
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だから明け方はいつも、柳刃包丁をレンガ色の砥石で砥ぐ。
裏切りにおびえそうになればなるほどに、包丁は切れ味を増していく。
いつか豆腐のようにこのあばら骨の隙間をぬって内臓を切り刻んでは麻婆豆腐を作るのだ。先ほど試しに水を切ってみたら良く切れた。
研ぎ澄まされた刃を愛するほどに、青光りする鋼に映る裏切りの色は濃くなりまだらでフラクタルな模様を浮かび上がらせる。
鮮血がうつくしい
こぶしで殴りつけた血の美しい流れは、シャツに染み付いてしまえばあとは熟れすぎたバナナのような色で、幾度洗えども決して落ちることはないがそのクレイジー柄のシャツをあえて繰り返し身に着ける。そんな
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