ホタル/chick
なたはホタルを飛ばし続けた。
ガラス越しにあなたが見えて、あなた越しに細い白煙が見える。
今日は少し、風が強いようだ。
「お仲間が、たくさんいる」
戸ががらっと開いたかと思えば、あなたはホタルを片手に私を手招きで呼び寄せた。思った通り、開けられた窓からは少し冷たい風が勢いよく入ってきた。
ここに引っ越してきて初めての夏。私は初めてあなたとベランダに並んだ。そして、初めて一緒にホタルを見た。
都会の夏の夜には、ホタルを飛ばす「お仲間」がたくさんいた。数年前にできたばかりのこのマンションにも、同じくらいにできた向かいのマンションにも。真っ赤な奴は姿を見せた。
「都会のホタルだね
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