小詩集 朝と夜/嘉村奈緒
 
ただ一片の音をたてることもなく進む足がある
無骨な足が、また一片の音を立ててあなたを打ちつけると
翌日の朝はなんとも表しがたいキイロだった
霧中で
始点と終点を履き違えて進む ただその足は(サイレント
あなた、ただ実直にキイロめいて 流される
それを散らした足は、放射線だと叫ばれた




*




牝馬の整えられた巻き毛を刈り取って
大事に引き出しにしまっておいたら
夜毎に抜け出し妻の布団に潜りこんでいるらしく
あくる日の朝から
妻は牧場へ出かけていっては残された者達の世話に勤しみ
私はどうしても納得が行かずに本も進まなくなった
ゆっくりと私は年老い
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