小詩集 朝と夜/嘉村奈緒
 
老いて
妻はその間もせっせと家と牧場を往復した




*




シチメンチョウの中身はなぜなあに
皮をなめなめ 昼をくりぬいた私たちのガウンのために
お父さんは羽ばっか拾ってくるもんだから
一家で湿疹を起こした時は参ってしまったの
ちょっと待ってよシチメンチョウ
あなたが穴をあけた靴下まだ持っているの
夜になると帳がおりて眠らなくちゃいけない
夜になると帳はおりて眠らなくちゃいけない


(下着は 履かせた ままでいて)




*




あたし、いつも毛布の中で警報だしてる
ヨルは怖いね、アサってば酸っぱいね、
って吐くんだけど山頂だからここ薄くなっちゃって
ぬるいの
ここ、名前がもらえなかった歴史、あたし
ばんざーいって、ヨルもアサもばんざーいって
息くさい景色に横になるの
だって山頂だもの
あれは繭というものだよって蹴られるの
待ってる








 
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