詩猫の独白/しろう
もっと有名なところでは、ある小説に書かれたこともある。
もっともあの小説は、偏屈な物書きのおっさんが勝手に俺の語り口調をでっち上げて書いただけで、内容としては俺とは無関係な上に実に心外なものではあったが。
ところで、いかに有名猫とはいえこれだけ長生きしていると、ぐーたらな俺でもだんだんと生きることに飽きてきてしまった。ぐーたらするだけに喜びを見いだすのが困難になってきたのだ。とうとうその厭世観が頂点に上りつめて「もうそろそろ死に場所を見つけるか」と思ったその時だ。ふとあの偏屈な物書きのおっさんのことを思い出した。やたら俺を観察しながら紙に向かって文字を書き付けていたおっさんを。
そ
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