踏み切りを待つ/カンチェルスキス
ていた
車輪が線路を噛んでゆく音は鋭さを増して
おれの頭の中を通り魔していく
おれは膝の裏か太ももにかけて筋肉があるのを自分で感じた
下りの特急列車は通過した
おれは今この瞬間にも誰かが殺されてると感じた
あるいは、殺される対象がおれのような気がした
踏み切りの向こうの歯医者の受付の女たちが
仕事終わりで固まっておしゃべりしている
飲み屋の薄い窓からカラオケをがなるおっさんの背中が
うっすら見えている
握りしめてたはずのスーパーの袋をおれは地面に落としていた
これから帰って飲もうと思って買った焼酎のパックが
死んだもののとして袋から飛び出して
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