踏み切りを待つ/カンチェルスキス
 
していた
 おれはそれを拾いたくなかった そしておれは拾わなかった
 上りの普通列車がのろのろとおれの前を通り過ぎる
 踏み切りの棒が空まで吊り上り
 執拗に追跡してた車たちもおれを置いて去っていった
 おれは手ぶらで歩き出した
 誰かが吐いた唾を踏んだような気がした
 帰っていくところもあったが
 それがどこなのか思い出せなくなっていた
 おれはなぜ歩いてるのかよくわからなくなった
 電灯も少ない暗がりの下で
 おれは通り魔犯みたいにボサッと突っ立っていた








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