十九首・・・じゅうくしょう・・・/佐々宝砂
 
ら将門の生首が飛んできたと申す。
そのころ塚はなかったのぢゃ。
生け捕られた生首はもう半ば腐っての、
切り口からは茶色いぬらりが垂れ下がり、
見開いたまなこはどろりと濁り、
ざんばらの髪はねちねちとぬめっておった。
そんな首が飛んできたのぢゃ。
それも一つではない。
全部で十九の生首がのう、
将門の首を大将のように真ん中に据えての、
まっしぐらにここまで飛んできたと申す。
人々も驚いたが、
何よりも川が驚いた。
川は逆巻いて赤く染まり、
それを見た人はこの川を血洗川と呼んだ。
そして土地の名を、
十九首と書いてじゅうくしょうと名づけた。
のう。
今もこの川は血洗
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