古い写真のこと 思い出のこと 憧れのこと/水町綜助
 
様々な面影

ネガとポジの風景

それを焦がす煙草の匂い

それはそのときすきだった煙草

もういちど


たくさんの断片が遠い灯台の明かりのように瞬間瞬き

電車のプラットフォームは賑わい出す

上りも下りもどちらでも僕には関係ないよ

乗らないからどうか静かにしていて

風が起こって煙りを巻き込んでしまうから

僕は立ち上る遠い煙を見つめているだけなんだから


白い都会の空に浮かぶ銀色のクレーン

いくつもの瓦礫を運び出し

いくつものあたらしい資材を運び込む

強く速く吹き流れる上空の風

それを甲高い笛の音みたいに切りつづけ
[次のページ]
戻る   Point(5)