古い写真のこと 思い出のこと 憧れのこと/水町綜助
様々な面影
ネガとポジの風景
それを焦がす煙草の匂い
それはそのときすきだった煙草
もういちど
たくさんの断片が遠い灯台の明かりのように瞬間瞬き
電車のプラットフォームは賑わい出す
上りも下りもどちらでも僕には関係ないよ
乗らないからどうか静かにしていて
風が起こって煙りを巻き込んでしまうから
僕は立ち上る遠い煙を見つめているだけなんだから
白い都会の空に浮かぶ銀色のクレーン
いくつもの瓦礫を運び出し
いくつものあたらしい資材を運び込む
強く速く吹き流れる上空の風
それを甲高い笛の音みたいに切りつづけ
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