春へ/佐野権太
二、リセット
階下は
しん、と寝静まっている
国道を通り過ぎる波音が
あらわれては
真っすぐ遠ざかる
ここへ来るとよくわかる
やはり僕は
焦っていたのだろう
またひとつ
潮騒が貫いてゆく
胎内の静けさで
―――リセット
あといくつか夜を越えると
正しい月と書いて
春と呼ぶならわし
三、初詣
今年は厄年だからと
背を押され
少し遠い神社へ出かける
考えてみると
前厄、後厄
家族の厄も自分の災厄だとすれば
生きているだけで厄だらけという
大変かなしいことになってしまう
どうりでこんなに賑わうわけだ
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